蛇紋岩は、暗青色または淡緑色に白い縞もようが入った、大理石と似た変成岩です。地殻変動の際に、地下数10kmの地底から押し上げられてきた岩石です。このため、すでに割れ目が入っていることが多く、大きな石材には向かない岩石です。
質のよいものは、装飾用に加工されて使われます。国会議事堂の参議院の玄関には、埼玉県皆野町産の「貴蛇紋(きじゃもん)」が使われています。貴蛇紋は、磨くと半透明の濃緑で白色のしまのある美しい光沢を放ち、堅硬な石材です。
奈良市の三条通りには、蛇紋岩が道路に敷き詰めて使われています。このほか、石碑、石灯籠、墓石など、小ぶりな石材として使われます。
英語で「サーペンティナイト(Serpentinite)」と呼ばれ、「蛇のような岩石」という意味です。表面が蛇の皮のような光沢をしていることから、蛇紋岩の名前が付きました。一般に「蛇」という「スネイク(snake)」に比べて、サーペント(serpent)という単語には「大きな毒蛇」という意味が込められています。
山脈ができていく過程や、地震で激しく地殻が 動く時に、地下数10kmほどの場所からカンラン石や輝石などが押し上げられ、断層へ押し込まれて上昇します。カンラン石は、玄武岩や斑れい岩の中に含まれている鉱物の一つです。押し上げらる際に、まわりの堆積岩に含まれている水分を取り込んで反応(低温含水変質)し、蛇紋岩に変質します。これを蛇紋岩化作用といいます。
こうして誕生した蛇紋岩は、滑らかな表面と美しい緑色をした岩石ですが、割れ目が多くて大きなかたまりとして採石しにくい岩石です。
地殻の下から押し上げられた岩石なので、蛇紋岩類は主に断層帯に沿って採石されます。産地は、北海道から九州にかけて、山脈が幾つも連なる造山帯に分布しています。
蛇紋岩を構成している鉱物は主に、板状のアンチゴライト、繊維状のクリソタイル、細かい板 状のリザーダイトの3種類があります。それぞれの結晶構造や化学組成が異なるので、変質する条件もそれぞれ異なりますが、カンラン岩から蛇紋岩へと変わる原因については、まだ不明な点があります。