趣きのあるグレーの色が特長です。全山が古生代の石灰岩という岐阜県大垣市赤坂の金生山（標高217メートル）から採れる石材の一つです。大垣市街の北西にあるこの山は、「化石の宝庫」です。二億年以上も昔のフズリナ、貝類などの化石の宝庫として、世界的に名が知られています。その山から、様々な石材が採石されます。地層により黒系、白系、紅系など、色が異なります。「美濃霞」は、グレーの色をした非結晶質石灰岩です。墨流しのように、ぼかし模様があります。ウミユリ、サンゴなどの化石を含んでいることがあり、耐圧、耐屈、耐伸に優れ、風化に対する抵抗力があります。建築用装飾材として、もっともよく使われる価値ある石材の一つです。
金生山で採れる石灰岩は、地名をとって「赤坂大理石」と呼ばれます。そのうち、灰色をしたこの石材は、「カスミ石」あるいは「霞大理石」の名で呼ばれていることから、「美濃霞」の名前が付きました。東京都内の大きな建築物で、赤坂大理石を使っているといえは、たいていがこの霞大理石といわれるほど、建築用石材として有名です。 ちなみに、霞大理石が採れる地層の上層には、有孔虫フズリナの化石をふんだんに含んだ石があります。これは「さめ大理石」とも呼ばれています。また、その化石が少ない部分は「ねずみ大理石」の通称名があります。 フズリナが群生する「さめ大理石」を磨くと、夜空に煌めく満天の星のごとく無数の斑点が現れます。江戸末期の西濃の漢詩人、梁川星巌は、それを見て驚嘆し、「星巌」のをつけたといわれています。
金生山の誕生は、二億五千万年〜三億五千万年の古生代末期です。従って、「日本の古生代研究のメッカ」とされています。山の古生代ペルム紀（二畳紀）の海中で出来た石灰岩が、海底の地殻変動によって隆起し、小高い山になりました。 東西1.1キロ、南北2.2キロ、標高217メートル。全山が石灰岩でできています。大理石層は、大きく分けて7層から成ります。下から「紅じま大理石」「霞大理石」「さめ大理石（大ざめ）」「さめ大理石（小ざめ）」「黒、および黒灰大理石」「豆斑大理石」「更紗大理石」の配列です。 金生山化石研究会編の「金生山――西美濃の生い立ちをさぐる」には、赤坂の伝統の大理石工芸を受け継いだ最後の石工、貝沼喜久男さんによる「金生山産石種と化石」と題した原図が掲載されています。昭和初期の金生山を丹念に踏査した労作ですが、その中の下層部分に、やはり「カスミ石」の表記があります。 赤坂では、明治から昭和初期にかけて、自然の賜物ともいうべき石材を生かした大理石細工が盛んとなり、明治時代の多い時は250人を数えました。しかし、残念なことに、その金生山は、戦後の高度成長のもと、産業用石灰の製造のために大規模な石灰岩の採石が行われた結果、今では元の三分の一の大きさにまで削られています。